科学的根拠に乏しい小中一斉休校で見えてきた課題と本当に必要な対策とは?

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こんにちは。林FP事務所の林です。

安倍首相の要請により、3月から小中高の一斉休校が始まりました。子どもたちがずっと家にいるので、本当に大変です(汗)

この一斉休校、いまだ収束が見えない新型コロナウイルスの感染拡大抑止を狙った大規模な措置ですが、一方で科学的根拠に乏しいと言われています。

うちも小中学生をかかえるイチ家庭に過ぎませんが、この措置をどのようにとらえ、どのように行動していけばいいのか。本当に科学的に感染拡大を防ぐために、調べ、考えてみました。子を持つ親として、負担が増える今回の措置には個人的に批判的な思いもあるのですが、この記事ではできるだけ中立、客観的な表記をしていきたいと思います。

そのため、文中には根拠となる多くの関連記事リンクを置いています。必要に応じて参照してください。

また、データは日々更新され、新しい情報も現れます。ですので、不確かな部分や将来結論が変わる可能性もあることを踏まえた上で、お読みいただければ幸いです。

そもそも一斉休校が科学的根拠に乏しいとは?

今回の一斉休校は政治的判断と言われています。その判断が正しかったか誤りだったかを評価するには時期尚早ですが、多くの国民に大きな負担を強いる施策ですから、科学的根拠があるに越したことはありません。

そもそも、科学的根拠とは何か、探ってみました。

スペインかぜと新型コロナウイルスはウイルスも症状も異なる

今回の一斉休校についてスペインかぜの施策を参考に決めたとの答弁がありましたが、スペイン風邪(H1N1亜型、A型インフルエンザ)と新型コロナウイルス(2019-nCoV)ではウイルスも症状も異なるため、参考にならない可能性があります。

1918年からスペインかぜが流行し、パンデミックとなった当時4000万人もの死者が出ました。中でも青年層の死者が多かったと記録されており、新型コロナウイルスの死者が高齢者等に多い現状とは異なります。

確かに青年層の死者が多いのであれば、子供を含む青少年の行動を制限することで、拡大を防ぐ効果は見込めます。しかし、もしその歴史を参考にするのであれば、新型コロナウイルスでは高齢者や持病者などハイリスクな人の行動を制限することが理にかなっているように思われます。

安倍首相の答弁には不明な点や理解しにくい部分が多く、やはり科学的根拠として即座に納得できるものではないでしょう。状況が刻々と変化するなかで、トップが判断することは容易ではないとは思います。しかしトップとしての発言の「重み」もあるわけですから、今後検証されるべき案件だといえるでしょう。

根拠に乏しい施策がおよぼす影響とは?

このように科学的根拠に乏しい小中高一斉休校措置ですが、どのような影響があるのでしょうか。

【効果・効率】効果に乏しく負担が大きければ、本当に必要な対策ができず逆に被害を拡大させる恐れ

政府や権力者の影響力というのは大きいものです。今回の措置は科学的根拠に乏しく、効果も疑問視されていますが、小中高生本人はもちろん、小中高生を持つ親は一律に負担が増えることになります。このように、負担が大きく効果に疑問といった施策を行っていると、「本当に必要な施策」にまで手が回らなくなってしまう恐れがあります。

例えば医療関係者の負担増を懸念する声が上がっています。パンデミックや重症者を増やさないために、医療現場を崩壊させないことが重要な条件ですが、そこに効果の不確かな負担を強いるのは施策として逆効果といえるのではないでしょうか。このようなことは氷山の一角で、ほかにも様々な影響が出てくる可能性があります。

また、逆に高齢者のリスクを上昇させるのではといった指摘もあります。科学的根拠に乏しく、効果の見えにくい施策のせいで、もともとハイリスクな高齢者のリスクを上昇させるとしたら、本末転倒というほかありません。この指摘が正しいなら、一斉休校などせず元通りに生活したほうがリスクの高い高齢者を守ることにつながります。

また子供を一斉休校にしたから感染リスクが低下する、と安心するのは逆に感染リスクを高める恐れがあります。

現状の日本において、主な感染拡大要因は「集団感染による小規模患者クラスター発生」、つまり感染リスクの高い環境(換気が悪く、密集度が高い場所、不特定多数)に集まった一人の患者から数人〜数十人規模で感染(この患者集団をクラスターと呼ぶ)が拡大する事例が報告されています。通常そこに子供はいませんから、主として感染を広げないために必要なのは大人の行動制限であるように見えます。

一斉休校という派手な施策で、本当に必要な施策が見えにくくなってしまってはそれこそ元も子もありません。

【人権】根拠のない被害、人権侵害を招く恐れ

さらには、科学的根拠のない批判や差別にさらされる恐れもあります。今回の措置で、小中高生などの子供が、まるでウイルスを広げる元凶のように捉える人が出てくる可能性があります。上述のとおり、ウイルスを拡散する可能性があるのは子供だけでなく、大人も含めて全員です。むしろ子供より格段に行動範囲の広い大人の方が、感染拡大リスクが高い。

にもかかわらず、今回の措置が小中高生がことさら危ないという誤解を与えてしまった可能性があります。実際、小中高生が公園にいたところを通報されたといった報告もあるようです。もしこれが事実なら、非常に残念な事態だと言わざるをえません。

もちろん通報すべき根拠などありません。子供が公園に出てはいけないということもありません(むしろ開放的な公園等のほうが、感染リスクは低いと専門家は指摘しています)。自宅待機は、小中高生の軟禁命令ではありません。このような誤解や被害が広がれば、人権被害につながる恐れがあります。

通報事案は、このような根拠のない被害が広がる可能性を示唆しています。

逆に一斉休校がメリットと考えられる主張も

新しい情報でまだ確度は低いですが、子供を行動制限することに一定の根拠となるかもしれない記事がありましたので、ご紹介しておきます。

現在までの症例分析で、子供の症状は軽く、高齢者等に重症者が多いことが判明している

インフルエンザなどの呼吸器感染症は、乳幼児や高齢者が重症化しやすいことが多いようですが、新型コロナウイルスでは乳幼児を含む子供で、重症化の症例が極めて少ないと報告されています。

日本の感染者データを見ても、10代、10歳未満がは他の年代と比べて少なくなっています。こちらの東洋経済のデータまとめがビジュアルに見やすいので、ぜひどうぞ。

この理由は定かではないですが、10歳未満の小児は感染しないのではなく、重症化していないだけとの報告があるようです。感染しても全く症状を示さなかった例も多く、これが事実だとすると、確かに10歳未満の子供がウイルスを保有しているかどうかの見分けが極めて難しく、行動制限に一定の根拠がでてきます。

とはいえ、まだ十分に確かめられた情報とは言えませんし、報告では10歳未満の小児としているので、仮にこれを参考に施策を打つとしても小中高生ではなく、幼稚園児、保育園児、小学校生の自宅待機ということになります。今回の施策とはズレがあるため、この点についても効果が不明です。

上記の集団感染の発生状況からみて、子供の行動制限をするしないに関わらず、それだけでどうにかなる事態でないのは明らかです。気をつけるべきは僕を含め私達大人の行動ではないでしょうか。決して、子供に責任を押し付けるようなことはできません。

危機の時こそ冷静で効果の高い施策を優先的に実行しよう

さて、一斉休校の効果をあざ笑うかのように、日経平均は大幅下落し続け、本記事執筆時点で2万円の大台を割り込みました。影響は子や子を持つ親だけではないということを、市場は伝えています。

未曾有の事態ですから、不安になったりパニックになりそうになるのは、誰でも当たり前だと思います。これを書いている僕も、新型コロナウイルスについては分からないことが多く、今後どうなっていくのか、不安になることもあります。しかしここでさらに不安やパニックを広げてしまえば、被害が拡大する、つまり生活が今以上にダメージを受けることになります。

残念ながら、今回の一斉休校措置で、政府にも混乱が広がっていることがあらわになりました。情報が集約されているであろうトップでさえこの状況ですから、個々人のレベルで情報を鵜呑みにせず、できるだけ冷静に、確度の高い情報を得ながら、正しく恐れることが大切だと感じます

我々大人が心がけることを、まとめてみます。

情報の取捨選択力や理解力を養う

様々な情報が飛び交う中、情報の取捨選択や理解する力が大切になってくると思われます。この点について大変参考になる記事がありましたので、ご紹介しておきますね。

できることを着実に実行する

まず私達大人が率先して

  • 帰宅時に、手洗い、うがいを着実に実行する
  • 十分な睡眠をとるなど健康管理をしっかりする

といった従来からの予防策を着実に実施するとともに、

  • ①換気の悪い密閉空間②人が密集③近距離での会話や発声、の3条件が重なる活動を避ける

ことが大事になってきているようです。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」2020年3月9日、 より著者抜粋

まずはこれらをしっかり実施することが重要でしょう。

それ以上に大きな負担を強いる施策は、効果の高いものから順にやらなければ、本当に国民も経済も疲弊してしまいます。

今回の新型コロナウイルスは長期化する恐れもあると指摘されています。我々大人が、腰を据えてウイルスと戦っていく必要性が増しているといえます。

経済は「一人ひとりの積み重ね」です。株価が暴落しているさなか、経済を崩壊させず、生活を守っていくためには、私達一人ひとりの知識・意識・行動を良い方向に変えていくのが結局は王道ではないでしょうか。

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この記事を書いた人

林 健太郎

林 健太郎

林FP事務所代表。1972年生まれ。大手メーカーに15年間勤務後、2014年に独立。「お金」という、会社員時代とは全く違う分野でコネも実績もゼロから始める。自身の投資哲学を発信するブログとメルマガが好評を博し、保険を販売せずに100世帯以上のライフプラン相談、投資相談を受ける。博士(工学・大阪大学)、ファイナンシャルプランナー(CFP®)。