住宅ローン、繰り上げ返済しないほうがいいの?

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こんにちは。林FP事務所の林です。

住宅を購入した多くの人が、住宅ローンを組んで長期にわたり数千万円という金額を返済していくことになると思います。そのため、少しでも税金で優遇される制度などがあったら利用したいですよね。

例えば友人などから、「住宅ローンは10年間住宅ローン減税が使えるから10年間は繰り上げ返済しないほうがいい」という話を聞くこともあるかと思います。

では、住宅ローンの繰り上げ返済って本当に利用しないほうがいいのでしょうか。

ここでは、繰り上げ返済をする場合としない場合のメリット・デメリット、また、繰り上げ返済をする場合の状況に応じたシミュレーションを行って詳しく解説していきますので、しっかりと理解していただいて自分にあった対策を取るようにしましょう。

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住宅ローン控除とはどのような制度なの?

そもそも住宅ローン減税とはいったいどのような制度なのでしょうか。

住宅ローン減税は、正式には住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とよばれる制度で、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、一定の要件を満たしたとき、その住宅ローン等の年末残高の合計額をもとに計算された金額を、所得税額から控除することができる制度です。

つまり、年末地点での借入残高が多い方が、税額控除を受けられる金額が多いことになります。

ローン残高限度額は4,000万円で控除率は1.0%のため、最大で40万円までの控除を受けることができます。なお、控除期間は10年間になるため、合計で最大400万円を所得税額から控除できるため、適用要件を満たすのであれば必ず利用すべき制度といえます。

では、本当に10年間は繰り上げ返済はしない方がよいのでしょうか。その点について詳しくみていきましょう。

なお、控除期間は今まで10年間でしたが2019年10月の「消費税増税」に伴い、2020年12月31日までの入居を条件に13年間に延長にされることになりました。

実際に繰り上げ返済をしたときの効果は?

では、ここからは簡単にシミュレーションして具体的な数字で見ていきたいと思います。

条件は、「3,000万円を35年間、固定金利3%、住宅ローン控除1%で10年間適用」という前提で進めていきます。なお本来は、繰り上げ返済の手数料がかかりますが、ここでは含めず計算しています。

 返済総額控除総額差額繰り上げ効果投資効果
繰り上げ返済なし4,821万円270万円4,551万円0万円0%
2年目初月100万円4,648万円258万円4,390万円161万円161%
5年目初月100万円4,677万円263万円4,414万円137万円137%
11年目初月100万円4,716万円270万円4,446万円105万円105%

「繰り上げ返済なし」と「2年目初月100万円」を比較してみましょう。

2年目に繰り上げ返済したことで、当然、住宅ローンの控除総額は減りましたが、実際の費用負担にあたる差額は4,551万円から4,390万円に減っています。

これは、繰り上げ返済をして予定よりも多く元金を返したことで、負担すべき利息が減ったためです。つまり、控除総額の減額よりも利息の負担額の方が多く減額されたということです。

よって、住宅ローン減税を気にして繰り上げ返済をしないという考えは正しいとは言えません。

また、資料の通り、繰り上げ返済するタイミングが早ければ早いほど効果は大きいため、繰り上げ返済をするのであればできる限り早く行うとより効果的といえます。

実際に意思決定する際の注意点

手元に資金がなくなるリスク

手元に多くの資金を残しておくのは大きなメリットといえます。予期せぬ事でお金が急に必要になることは長い人生で珍しい事ではありません。そのため、基本的にはライフプランを改善して資金に余裕が出てきたら、繰り上げ返済をするという考えが理想的といえます。

その人のライフプランによって正解は異なる

いろいろな人のアドバイスを受けることは良いことですが、その人のライフプランを見ていない人の意見は鵜呑みにしないほうが賢明です。専門家の意見は正しいことが多いですが、あなたにとって適切なアドバイスかは別の問題です。

そのため、ライフプランを確認していない人の意見は参考程度に留めておくべきと考えましょう。

住宅ローンのような人生にとって非常に大きな金額の意思決定であったり、仮に相手が善意の素人の場合などは間違っても鵜呑みにせずに、実行する場合でも良く検証して行動に移すことを心がけましょう。

もし、あなた自身がライフプランを立てていないのであれば、いずれにしても正しい判断をすることは難しいため、まず自己のライフプランを立てることをおすすめします。

一般論はあくまで一般論として

一般論を知っておく必要はありますが、ライフプランは人それぞれ違うため、当然その人にあてはまる場合とそうでない場合が存在します。あなたにとって当てはまるかは状況によっても違うため、その一般論が当てはまるかどうかは詳しく調べてみないと判断が付かないため注意が必要です。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済ひとつをとっても、判断は複雑で簡単に結論を出すことはとても難しいです。

原則、その人のライフプランという人生の戦略を見てから判断することを基本としましょう。

戦略とは、目標を達成するための総合的かつ長期的な計画のことで、その目標を達成するための手段が言わば戦術です。

住宅ローンの繰り上げ返済は戦術にあたり、その戦術ばかりに気をとられ「木を見て森を見ず」というような事にならないよう注意し、自分の納得できるライフプランを設計し、より豊かな人生が送れるようにしていきましょう。

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この記事を書いた人

林 健太郎

林 健太郎

林FP事務所代表。1972年生まれ。大手メーカーに15年間勤務後、2014年に独立。「お金」という、会社員時代とは全く違う分野でコネも実績もゼロから始める。自身の投資哲学を発信するブログとメルマガが好評を博し、保険を販売せずに100世帯以上のライフプラン相談、投資相談を受ける。博士(工学・大阪大学)、ファイナンシャルプランナー(CFP®)。