医療保険の入院時平均費用を鵜呑みにするな!

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こんにちは。林FP事務所の林です。

保険のセールスや広告などで医療保険が勧められる際、入院時平均費用が高いから、それに備えて保険に入っておくべきだという話がよく出てきます。

よく言われる入院平均費用は確かに高額で、もし長期の入院が必要になったらと想像するとかなり不安になりますよね。

ただ、この入院時平均費用について、実際にはもっと抑えられると考えています。

そこで、この記事では入院時平均費用の中身について具体的に解説し、さらに公的な補助制度である高額療養費制度について説明していきます。

高額療養費制度については知らずに入院すると損をしてしまいますので、ぜひ参考にしてください。

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入院にかかる平均的な日数と費用

保険の話にはいる前に、実際に入院した人の入院日数と入院費用を正しく把握しておきましょう。事実を知れば過剰な不安を抱くこともありませんし、適度なリスク対処も可能になります。

入院日数の短期化

公益財団法人「生命保険文化センター」が公表している令和元年度の「生活保障に関する調査」によりますと、入院日数の平均は15.7日で、31日以上の入院となった人は全体の9%程度です。

このデータから9割強の人が一ヶ月以内の入院で済んでいることがわかります。

医療保険の紹介に使われている入院期間だと上記のものよりも長いものを見かけることがありますが、生命保険文化センターの最新の数字が妥当だと考えていいでしょう。

それでも1割弱の人は一ヶ月以上の入院となっているので、確実に短期間で退院できるとは限りません。しかし、もしあなたが働き盛りの年齢であれば、短期入院となる可能性が高いでしょう。

一般的に年齢が高くなれば体力も下がり、長期入院となる病気に罹患しやすくなりますので入院期間は若い人に比べれば長くなります。

入院時の平均自己負担費用

同じく生命保険文化センターが公表しているデータを参照すると1回の入院にかかる平均的な入院費用は20.8万円となります。人によって入院期間が異なるので一日あたりの平均に計算し直すと2.3万円になります。

ただし、この金額は高額療養費制度を利用したかどうかによって数字の意味合いは大きく異なります。

高額療養費制度は、公的な医療保険であり、毎月健康保険料を支払っている人なら誰でも受けられる制度で、この制度を利用すると一ヶ月に支払う金額に限度が設けられます。

つまり、その限度額を超える入院費用がかかったとしても、その分は保険から支払われるということです。

とても素晴らしい制度なのですが、一点注意すべきことがあります。高額療養費制度は申請しなければ適用されません。言い換えれば、この制度を知らない人や申請手続きを行わなかった人は必要以上の金額を支払うことになってしまうのです。

生命保険文化センターのデータによれば、利用した人が6割弱なので、4割強の人は高額療養費制度が必要ないか、あるいは必要以上の金額を支払っている可能性があるのです。

ちなみに自己負担限度額は年収と年齢によって変わります。例えば、70歳未満で一般的な年収の人であれば、限度額は8万円強となります。

もし高額療養費制度を使用していなかった人を、制度を使用した金額に置き換えられれば平均入院費用が下がる可能性があります。

また入院費用を計算する上で、大きな金額となるのが差額ベッド代、食事代、衣料・日用品代です。しかし実はこれらの金額もかなり抑えることができます。

まず、差額ベッド代についてです。差額ベッド代は相部屋に入院すれば発生しません。

個室を希望すればもちろん支払う必要がありますが、仮に個室しか空いてない場合など病院側の都合で個室になる場合、事前に相部屋を希望すると伝えていれば、差額ベッド代を支払う必要はありません。

それから、食事代について、病院では1食460円と値段が決まっていて30日分で41,400円と計算できます。

この分が生活費にプラスされると考えがちですが、実際には普段行っていた食事の費用はかからなくなるので、差し引きで考えるべきなのです。普段から外食が多いなど食費が多くかかっていた人にとってはむしろ節約となる可能性もあるわけですからね。

節約とまでいかなくとも、普段の食費との差額で考えれば、病院食30日分41,400円を純粋に追加費用と考えるのはやりすぎでしょう。

そして、衣料・日用品について、入院生活を行うからといって、新しいものを買わなければならないわけではありません。普段使用しているものを使えば問題ないでしょう。そうすれば0円です。

このように、入院生活にかかるお金も節約すれば、かなり費用を抑えられるということが実感できたはずです。

なお、12ヶ月で4回目以降の入院であれば、医療費限度額はさらにほぼ半額になるので、繰り返しの入院や長期の入院でも金額が抑えられるようになっています。これは高額療養費制度の中の、「多数回該当」と呼ばれる仕組みです。

高額療養費制度

入院費用のところでも説明した通り、高額療養費制度は1ヶ月の医療費負担に上限を設ける制度になります。

70歳未満で、月収53万円以上の方などが含まれる上位所得者であれば「150,000円+(医療費−500,000円)×1%」、一般所得者であれば「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」、住民税非課税の低所得者であれば「35,400円」が上限額になります。

70歳以上だと住民税非課税の人であれば、さらに上限額が低くなるよう設定されています。

高額になりやすい入院費用を抑えられる素晴らしい制度ですが、残念ながら自動的に適用されるものではありません。必要な場合は必ず申請手続きを行わなければなりません。

そもそも知らなかった、難しそうだから諦めた、申請手続きを忘れていたという人でも、過去2年にさかのぼって申請することができるので、必ず申請を行うようにしましょう。

まとめ

保険セールスで使われているデータを鵜呑みにするのは危険です。入院費用について必ず使うわけではない差額ベッド代が含まれるなど、多めに見積もられていることがあり、さらに節約できる可能性については(知ってか知らずか)言及されていません。

言葉を額面通りに受け取るのではなく、そのデータが何を表すのかを深読みする必要があります。

そのためには、僕たちが本来受けられる制度について、よく勉強しておかなければいけません。自分で学ぶのが大変ならセカンドオピニオンを提供できる(できれば保険を売らない)FPに相談するのも一つの手です。

それから、高額療養費制度を使えば、入院費用などの医療費が高額になった場合、1月あたりの上限額を設けることができ、それを超えた医療費を保険費でまかなうことができます。

ただし自動的に適用されるものではなく、申請手続きを行う必要があるので、必ず手続きを行うようにしましょう。

ちなみに高額療養費制度は月単位で受けられる制度なので、緊急でなければ入院期間を月初から行えるよう計画すると費用を抑えられます。

また、自己負担分は医療費控除を受けられることも頭に入れておいてください。

それでも追加で医療保険を検討するなら、公的保険がカバーしない部分、例えば先進医療技術料などをまかなうものや団体割引保険、可能な限り免責日数を長く取れるものを選びましょう。

医療保険に限りませんが、保険というのはあくまで「自分では賄うことができない大きな出費」に備えるための「コスト」です。それを踏まえた上で、公的保険の内容もよく知り、必要ならば検討していきましょう。

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この記事を書いた人

林 健太郎

林 健太郎

林FP事務所代表。1972年生まれ。大手メーカーに15年間勤務後、2014年に独立。「お金」という、会社員時代とは全く違う分野でコネも実績もゼロから始める。自身の投資哲学を発信するブログとメルマガが好評を博し、保険を販売せずに100世帯以上のライフプラン相談、投資相談を受ける。博士(工学・大阪大学)、ファイナンシャルプランナー(CFP®)。