2019年12月に閣議決定された「2020年度税制改正の大網」が2020年1月に国会へ提出になり、今まであった制度が一部見直されることになりました。ここでは、人生100年時代を迎え、各家庭の安定的な資産形成を促進する観点から改定された“NISA(少額投資非課税)制度の見直し”について詳しく解説していきます。
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NISAって何?
まず最初に、NISAとはどのような制度なのか簡単に説明していきましょう。NISAとは、2014年1月に始まった「少額投資非課税制度」のことで、イギリスの個人貯蓄口座ISAを基にして作られた制度で、通称NISAと呼ばれています。
NISAは「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類に分けられます。
なお、今回の改正によりジュニアNISAは利用実績が少なかったため、2023年までとなり終了となります。そのため、ここでは一般NISAから生まれ変わった新・NISAとつみたてNISAについて詳しく解説していきます。
制度の基本となる一般NISAとは?
「一般NISA」では、毎年120万円までの投資で得られた収益が最長で5年間非課税になります。そのため、安定的な資産形成のためには利用しない手はない制度のひとつといえるでしょう。
なお、今までの制度での利用対象期間は、2014年から2023年までとなっています。
一般NISAの対象商品は、上場株式やETF、公募株式投資信託などです。ちなみにETFとは株価指数連動型上場投資信託のことで、株式と同じように証券取引所に上場している投資信託であり日経平均株価などの動きに連動するように運用されます。
なお、5年間の非課税期間終了後は、必ずしも売却しなければならないわけではありません。非課税期間終了後、翌年のNISA口座へ引く継ぐことで非課税期間を延長することが可能で、このことを「ロールオーバー」といいます。
もし、5年で売却しない場合は、ロールオーバーを利用して非課税期間を延長して制度の恩恵を受けることをおすすめします。
では次に、一般NISAは改正によりどう変わるのか具体的に見ていきましょう。
一般NISAは新・NISAに変わり構造に大きな変化あり
今回の改正により一般NISAは新・NISAに変わり、今までと違い2階建て構造の考え方となり構造そのものが大きく変わりました。
1階部分では安定的な資産形成を目的に、年間20万円を上限に運用益が5年間非課税になります。また、2階部分では成長資金の供給の拡大と長期保有の株主の育成を目的に、年間102万円を上限に運用益が同様に5年間非課税となります。
なお、投資対象商品については、1階部分は積立・分散投資に適した一定の公募等株式投資信託やETF、2階部分は現行の一般NISAから高レバレッジ投資信託などの安定的な資産形成に不向きな一部の商品を除いた商品が対象となります。
基本的には、2階建て構造のため、1階部分を利用しない限り2階部分で投資することはできません。
これは、より多くの国民に積立や分散投資を経験してもらうためですが、上場株式などの投資経験者は証券会社に1階部分を利用しないことを届け出れば、2階部分のみ投資することも可能です。当然ですが、この場合の投資限度額は、2階部分の102万円までとなります。
なお、この新・NISAは2024年から口座開設したものが対象で、それ以前に開設したものは現行の一般NISAの制度の対象となるため注意しましょう。
つみたてNISAとは?一般NISAとの違いは??
ではここからは、「つみたてNISA」について詳しく見ていきましょう。つみたてNISAは、一般NISAより少し後の2018年1月からスタートした制度で、特に少額からの長期積立を支援することが可能で、毎年40万円までの投資分が同様に非課税となります。
なお、非課税期間は最長で20年で、投資の対象期間は2018年から2037年となっています。
対象商品は、新・NISAの1階部分と同じで、積立・分散投資に適した一定の公募等株式投資信託やETFなどが対象になります。
また、つみたてNISAでは、新・NISAのようにロールオーバーして非課税枠を延長することはできません。非課税期間の20年間が終了したときは、NISA口座以外の課税口座(一般口座等)に払い出しになります。
税制改正後のつみたてNISAは
つみたてNISAは改正後、非課税金額枠の変更はなく、引き続き年間上限40万円を最長20年間利用することができます。
改正点は口座開設可能期間の延長で、改正前は先述のとおり2037年までとなっていましたが改正により2042年まで延長されました。これにより2023年までに口座開設することで最大の20年間の非課税期間を利用することが可能になりました。
注意点もあり!併用して利用することができない
一般NISAのときと同様に、新・NISAとつみたてNISAの両方を利用することはできないため、どちらか一方を選択して利用することになります。
そのため、比較的若い人が老後など先々の不安を解消したい場合は、少額で長期間税制の優遇を受けることができるつみたてNISAのほうが適しているといえるでしょう。
まとめ
2020年度税制改正によるNISAの改正内容がお分かりいただけたかと思います。NISAは、改正内容だけでなく改正前の制度内容を知ることでさらに理解を深めることができると思います。