未婚のひとり親への税優遇措置が新設!【2020年度税制改正】

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2019年12月に閣議決定された「2020年度税制改正の大網」が2020年1月に国会へ提出になり、今まであった制度が一部見直されることになりました。ここでは、現代社会の構造変化に伴う、ひとり親家庭に関する所得税の見直しについて詳しく解説していきます。

所得控除を受けることができる「寡婦(寡夫)控除」が見直しになる

まず最初に寡婦(寡夫)控除とはいったいどのような控除なのでしょうか。

その前に寡婦とは、夫と死別・離婚してその後再婚していない女性のことを指します。男性の場合を寡夫と呼び分けられていますが、ここでは寡婦控除を中心に説明していきます。

また、少し聞きなれない“控除”という言葉は、「一定の金額を差し引く」という意味で、寡婦控除とは、寡婦に該当し一定の要件を満たす人に対して、所得から一定の金額を差し引いてくれる所得税の優遇制度です。

寡婦控除は、複数ある所得控除のひとつです。所得控除は他に、配偶者控除、配偶者特別控除、医療費控除など全14種類あり、それぞれの人の状況を考慮して所得税の負担を軽減するために設定されています。

所得金額 - 所得控除額 = 課税所得金額

収入から必要経費を引いた「所得金額」から、さらに所得控除額を差し引いた「課税所得金額」に税率を掛けて所得税額が決まります。

今までは、一般の寡婦に該当する場合27万円、特定の寡婦に該当する場合は35万円が所得から控除され、所得税を計算するときの基となる課税所得金額が下げられていました。

2020年度の税制改正により、この寡婦控除の条件が見直されました。では、どのように変更になったのか具体的な内容について確認していきましょう。

未婚のひとり親でも寡婦控除と同様の控除が適用になる!

上記のとおり、寡婦とは結婚していたことが条件となるため、今まで未婚のひとり親は寡婦控除の対象ではありませんでした。

今回の改正で大きく変わるのは、今まで対象とはならなかった「未婚のひとり親」も、改正後、寡婦控除と同様の控除が受けられるということが、大きな変更点のひとつになります。

みなさんも「シングルマザー」という言葉をご存知かと思います。これは本来「未婚の母」という意味ですが、現状では結婚したけれども離婚してひとり親になった場合も含まれて使われているのが一般的だと思います。

つまり今までは、一般的なシングルマザーでも対象となっていた人と対象外だった人がいたということです。

今回の改正により、男女問わずすべてのひとり親に同様の控除が適用されるようになり、よりわかりやすく、そして公平な税制支援を行うことが可能になりました。

改正前の制度内容の詳細

上記のとおり、改正前は未婚のひとり親には適用されずに婚姻歴のある人に限られていました。

また、女性は寡婦に該当すれば基本的には寡婦控除の適用を受けることは可能ですが、男性の場合は寡夫に該当しても一定の要件を満たした人だけが寡夫控除の適用を受けることができました。

本人の合計所得金額が500万円以下であることや総所得金額が38万円以下の生計を同じとする子がいることなどが要件となっていました。

改正後は誰がどのくらいの金額を控除できるのか

まず、改正後は婚姻歴や性別にかかわらず、総所得金額48万円以下の生計を同じとする子がいる単身者について、「ひとり親控除」が適用になります。

生計を同じにする子の条件を満たせば、全員が対象となるため、とても分かりやすくなりました。この場合の控除額は35万円となり、この金額が所得から差し引かれます。

また、寡婦に該当するが扶養する子がいない場合は、引き続いて寡婦控除として27万円が控除になります。扶養する子がいないが寡婦に該当するケースは親などを扶養としている場合です。

ただし、ここで1つ注意点があります。「ひとり親控除」も「寡婦控除」も所得制限があり、所得が500万円(給与収入の場合678万円)以下でなければ適用を受けることができません。所得が500万円を超える場合は、他の要件を満たしていても控除を受けることはできないため注意が必要です。

また、細かな点ですが、住民票の続柄に「夫(見届)」「妻(見届)」の記載がある人は対象外になります。これは、事実上夫婦として生活をしながらも所定の届け出をしていないため、法律上の婚姻に至らないケースです。この場合も、対象となりませんので注意しましょう。

今までの説明は所得税に関するものですが、住民税についても同様に改定になりました。住民税では、ひとり親控除で30万円、寡婦控除で26万円が控除され課税所得金額が計算されます。

まとめ

簡潔にまとめるとこの改正により、「ひとり親控除」では条件を満たした場合、35万円の所得控除を受けることができ、「寡婦控除」では条件を満たした場合、27万円の所得控除を受けることができます。

今回の税制改正により、子を持つひとり親の未婚者に対する不公平が緩和され、また男女での差がなくなったことで制度内容がとてもわかりやすく明解になりました。

年末調整時に申告書への記載が必要になりますので、しっかりと理解して、所得控除を受けてこの制度の恩恵を受けられるようにしましょう。

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この記事を書いた人

マネ賢 マネ賢

マネ賢

マネーの賢泉事務局アカウントです。これからも役立つコラムを公開していきます!